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 Big Dipper メンバー作

実話な小説





「葬儀の絆」       東野圭吾郎


1章
 ふさわしいとは感じなかった。
太陽もそろそろ高いはずなのに冷たい霧に包まれた葬儀の日の事である。親友辰也の母が亡くなったのだ。

辰也には卑猥(ひわい)なあだ名があった「ち◎ぽたつや」略して「ち◎ぽたつ」。私と辰也はそう呼びあえる仲である。『親友だ』。

私は取り急ぎの仕事を済ませ足早に喪服に着替えると商用車を走らせた。分厚い雲は今でも雨が降りそうだったがまだ『ワイパー』は必要ない。

当時の私は葬儀にもそろそろ慣れてかけてきた頃でもある。佛式なのか神式なのか当然の確認は心していた。神式だった。親族の列席は祭壇に向かって右にある。一般は左だ!慣れたものである。熟知していた。いや熟知していたはずだった。

車を駐車スペースからかなり離れた場所に停めるしかなかった。鍵は慣れない胸ポケットにしまい、替わりに携帯を取り上げ時間を確認する。
そして歩を速めた。

私は前日に行われていた通夜にも参列していたので今日の受付では記名などしない。これも経験を積んだからこその判断だ。玄関をまたぎ霧でしっとりとした喪服の前ボタンを神妙な仕草で穴にくぐらせた。関係者へ軽く会釈をし受付の前をコトコトとサイズの合わない革靴の踵(かかと)からなる雑音をなるべくたてぬよう、すらせるように奥の会場へと進んだ。


2章
 辰也の母とは幼いときから自宅に通っていたのでよく知っている。あれは10年前のときだったか…(長くなるのでここは割愛します)


3章
 湿度が高いはずなのに荒れた唇を舌で濡らし一文字にくくった。

広い会場を前に呼吸を調え葬儀屋の従業員であろう女性の前に立つ。周りを見渡す。神妙な面持ちで立ったままの一般参列者も多い。

やはりこのような畏まった行事はキライだ。いや!キライというより苦手というのが正しい表現だろう。

思い起こせば私がまだ幼い頃のことだ、叔父の葬儀の時だった。お坊さんの読経に何故か笑いが込み上げ、その笑いで下半身からしたたりそうになるほどである。津波のように何度も押し迫る笑いと冷や汗を必死で押し殺していた事があった。

しかし防波堤は積み上げた紙コップのように簡単に崩れた。ヒャックリにも似た大声で吹き出してしまったのである。もちろん下半身からも少なからずともあれは噴出した。

だが今の私はそんな幼い年ではない。『堂々の29歳だ』


4章
 最前列の席が何席か空いている!何故だろう?深く考えないようにしよう。

私は葬儀屋の女性に伺いも立てず胸打つ鼓動に引っ張られるかのように最前列の席へと向かう。

今思えば…辰也の母の葬儀という事もあり気持ちが高ぶっていたのか。いや!あの年の頃の私は自分自身に強気でいたかったのか。その時代の私に気にする事は何もないはずだった。

私は周りに軽く会釈をしながらその最前列の席に座る。隣は1人。不思議には思わなかった。私に似た思考の持ち主だろうと感じていたのだ。


5章
 程なくするとマイクで親族代表へ榊(さかき)をあげるよう促された。一連の儀式が終え「次に」と、マイクの声が一般◎◎様へ同じく榊をあげるよう告げられた。

すると隣の方が立つ気配を感じた私は「一般」という言葉に迷いなく一緒に立ち上がり隣に合わせ『3歩前へ進んだ。』

今思えば前に進む時点で事の重大さに気づけばよかった。宮司が慌てた表情で私を見る。家業のお客さんでもある近所の宮司さんだった。心の中で小さく頭を垂らした。

しかし何かがおかしい。不自然な空気が漂うと同時に隣の方の視線が私の右頬に向けられたようだ。身長は私と同等に思われたがその目線は見下ろされたようにも感じられた。

ドッキッとした。もしやこれは一般代表の儀式なのか!?そんな段取りがあったなんて聞いた事がない!まずい!神経を尖らせ空気を詠む。

後ろに立っている人の気配が全く感じられないのだ!間違いに気づいた瞬間である。


6章
 私は空気を飲み込むように隣の方に視線を向けた。市長である。まさか!これは間違いない。一般代表の儀だ!

思えば他の親族の儀式もまだ終わっていない。
市長の横に立ったまま私は榊をあげる儀式を見守る。私には榊は渡されない。当然の事だ。真っ白になった脳の隙間で咄嗟に考えた。

まてよ!ここまできてしまったのだ。市長と同等の立場になりきればいい。私は県議会議員という事で思ってもらえばいい。こんな状態だ可笑な発想だった。

当然無理はある。宮司は家業のお客様。私は誰から見ても20代。しかし私には悩む暇などなかった。

とにかく『堂々としよう!』

市長より落ち着いた感じで儀式に合わせ2礼2拍をし市長よりも時間をかけゆっくりと落ち着いた素振りで1礼もした。

2拍はもちろん音をたてない。知っている、知っているがそんな事今となってはどうでもいい。ここでそんな事知っていても今の私にはなんの意味もないのだ。

辰也の顔など見れない。辰也はどう思っただろう。いや!辰也はどうでもいい。『親族はどう感じてしまったのだろう。』
考えたくもない。

ここから逃げたい気持ちでいっぱいだった。


最終章
 どのように席に戻ったのか覚えていない。いや!どれくらいその会場にいたのかすら覚えていない。

時間的な空間の記憶が全く無いないのだ。

気がつけば商用車の中。アクセルをいっぱいに踏み込んでいた。

車内は密閉された空間。現実から逃げたい一心でカラスが潰されるような罵声で何度も何度も大声で叫んだ。額に突き刺さった記憶を脳みそごと握り潰したかったのだ。

葬儀の事は熟知してると勝手に思い込んでいた。

自分に哀れさと共に惨めさも感じた。


胸の奥が痛む。

どういう訳か『やけに目が霞む。』

いや!『ワイパー』をかけ忘れていただけだった。


私は左の指先を伸ばし「カクン」とそれを起動する。

「ガクガク」と交換時期を過ぎたワイパー音がやけに空しく感じられた。


ふさわしいとは思いたくなかった。

外はいつのまにか霧雨になっている。

終わり。


あとがき
 その後辰也はそのことに触れた事が無い、葬儀参列のお礼も言われた事がない。私もあえてそれに触れた事などない。
それは辰也の優しさなのか。

あだ名で呼ぶのはもうよそう。

また彼との「絆」が深まったようだ。
               「葬儀の絆」



おわり             東野圭吾郎=きゃぷ。。
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